かいじゅう兄弟

二分脊椎症のママと発達障害のかいじゅう兄弟が繰り広げるドキュメンタリー

第245話「隠蔽」【2017年3月】

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学年末の学校行事で、学級目標を達成できたかどうかの発表会がありました。Sくんは不登校期間で欠席しました。

学級目標は”温かいクラスを作ろう”。Sくんにとってこのクラスはけっして温かい物ではありませんでしたが、発表会では、Sくんの台詞があって、温かいクラスにする為に努力して、温かいクラスが出来上がったという内容でした。

Sくん:「僕は虐められています!もう限界です!このクラスはあったかくなんか無い!って、発表会で僕が言ったら、台詞と違うから怒られるかな。」

虐められて学校へ行けなくなっていたSくんは、嘘の台詞の練習をさせられるのも、全校生徒の前で発表するのも「嫌だ」と言いました。

年度末はPTAも総会があります。行事で、障害児の見守りの為に来ていた保護者(パパ)やヘルパーさんがPTA活動に無理矢理参加させられた事について、学校側に再発防止を訴えましたが、PTA総会でそういった事が話し合われる事も、問題に上がる事もありませんでした。

形だけの発表会、形だけの総会。「そんな事はなかった」、そういう風に処理して、みんなの大きな時の流れは流れて行きます。

ちなみにSくんの不登校もクラスのみんなには酷い風邪を引いていると報告されていました。一年前、一ヶ月におよぶ風邪って??今回も10日程でしたが、もちろん風邪なんか引いていません。

隠蔽。いいクラス、いい学校のふりをして、時を流していく。本質に目を向けないで、心が盲目のまま生きていく。改善は皆無。だから、どんどん悪くなる。そんな環境からは距離を置くしかありません。

私はPTA免除で一切関わらない選択をする、Sくんは学校へ行かない選択をする。今はチックや強迫性障害などの二次障害が出ながら学校へ通っているSくんですが、あんな所へ行く意味あるのかなと感じています……。

つづく。

第244話「本の読み聞かせ」【2017年3月】

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2回目の不登校の時から始めた本の読み聞かせ。最近、東田直樹さんの「自閉症の僕が飛びはねる理由-会話のできない中学生がつづる内なる心」を読み終えました。

(Sくんはもうすぐ四年生になりますが、図鑑以外の字が詰まった本を自ら読む事はありません。だから、内容が精神年齢に合っている本を、私が読んであげる事にしたのです。)

感想を多く語る事はありませんでしたが、読み終えてから2時間くらい泣いていました。響くものがあったのだと思います。

Sくんはたまに過去の自分からのメッセージを私に届けてくれる事があります。初めて◯◯した時はこう思っていたけど”言葉が見当たらなかった”、感動したけどあの時は”まだ考えがまとまらなかった”とか、そんな感じです。

だから、この本の感想もいつか未来のある日に届けてくれるかもしれません……。

つづく。

第243話「ずっと遭難している感じ」【2017年3月】

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あちこちに障害があって、何かと不自由な身体ですが、一番の困りは、腸がまともに機能していない事。意図的に大量の下剤を飲んで手でお腹を押して出すか、外出日に対して二日前から絶食してお腹を空にしてから薬を止めるか、どちらかしかありません。どちらも吐き気や目眩、激痛を伴います。

理想は一日〜二日の間に通院や面談の予定を続けて入れて、次の外出までに五日自宅療養期間にします。が、だいたいイレギュラーが発生して自宅療養ができないまま次へ。するとずっと絶食していている形になります。

月に半分以上食べていないのに、体重は減らない!これは身体が飢餓状態になっているんだと病院の先生が教えてくれました。ずっと遭難していると身体が思い込んで、たまに食べれる時にたくさん栄養を吸収するようです。

今の薬もたくさん試した中で一昨年に出会ったものでした。副作用の腹痛や吐き気は酷いけど、リズムは作れる。今はこれしかありません。なぜなら、他のは今までに飲み過ぎてだんだん効かなくなって、量を増やしても効かなくなって、止めたからです。

いつまで通院できるかな?とふと思います。介護認定が要介護4、つまり施設に入ってる人もいるレベル。いつか、訪問に来てもらう形か、施設に入らないとならないだろうなと思います。

二番目の困りは歩く事。なんとかゆっくり歩けますが、あちこち痛いまま、そしてとても疲れやすいです。足に筋肉がつかないので足だけ細く、足首は長靴か豚足みたいに浮腫んで、歩くと元々曲がっている足の指から血が出たり爪が割れたりして血豆になります。階段は無理なので遠回りしてエレベーターを探します。どうしても体力の限界で歩けなくなったら、タクシーに乗って家に帰ります。タクシー代がバカにならない(汗)。いただいている手当が、タクシー代、医療費、医療用具費用に消えていき、マイナスになりそうでハラハラします。いつまで自分の足で通院できるんだろうか、ふと思います。

脊椎や背骨は途中までしかなくて、今も大きな腫瘍が様々な神経を飲み込んだままです。歩ける事が奇跡、脳に障害がない事が奇跡、シャントも入っていないから定期的な手術もない、なんとか自立して生きているから大丈夫、と、病院の先生は言うけれど、ふと、十年後、二十年後を思うと、なんで生きているんだっけという虚無に襲われます。強く生きたいと思うわけでも、強く死にたいと思うわけでもなく、今を感じたり、将来を想ったりすると、ふと、何もない感覚に陥るのです。

全部、内部疾患だから誰も知らない。私は元気そうに見えている。これが三番目の困りです。だから、話した所で信じてはもらえない、病院の先生と私しか知らない、私の秘密です……。

つづく。

第242話「Sくんの、口は災いの元」【2017年3月】

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学校へ再び通い出してから、片目の瞬きが止まらないSくん。チックです。明らかに…学校へ通う事がストレスになっている…。

集中的な暴力は先生が押さえてくれているようですが、暴言はある様子。しかし、Sくんも空気が読めずに発言したり、急に上から目線になったり。相手がカチン!と来るような事があるようです。

丁度それは家の中のパパとSくんの関係に似ています…。

先生方は一つずつの場面を時系列で確認して、それぞれに必要な指導をしてくださっているようですが、Sくんに被害者意識が強く、記憶が時系列ではないようで。何年も前の同じような記憶がトラウマとして残っていてそれを語り出したり、誰が、どこで、何をしたが分からなくなったりするようなのです。相手のお子さんが自己申告してくれてやっと指導できる状態のようです。

本人は、「H先生のLD等通級教室をとりたいから、普通学級に籍を置きたい、育成学級には逆交流へ行きたい」との希望。では、H先生が担当ではなくなったら…?とか、また普通学級で虐められたらお休みする…?とか、いっそのこと、育成学級へ移籍してみる…?とか、色々考えなければなりません。

いずれは育成路線に移らなければならないSくん。なぜなら、この学力の遅れ、コミュニケーション力の無さで、中学が普通学級という事はあり得ないからです。六年生になったら必ず育成所属にしておかなければならない。(パパはこの点に関して反対しています。)

移籍のタイミングをギリギリの六年生になる時にする為に五年の夏に申し出るのか、五年生になる時にする為に四年の夏に申し出るのか。どうしたら一番Sくんにとって良いのか。ここから半年ほどで判断しなければなりません……。

つづく。

第241話「Sくんと色鉛筆」【2017年3月】

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音に敏感なSくんは最近、色鉛筆の種別による、紙との摩擦音が分かるようになりました。「なんか気持ち悪いザラザラの音がする」と、私のお下がりを使わなくなりました。

Sくん:「ママ、もしかして、ママもこの色鉛筆キライやから、子供にお下がりしたんとちゃうの?」
私:「(あ、バレた。)」
Sくん:「ママの方の色鉛筆ケースにあるのを貸してよ。」
私:「ヤダよー…。高いのやし、素晴らしい描き味やし、仕事用だよ。」
Sくん:「……同じの買ってよ。」

なるほど…。私が色鉛筆の硬さや重ねた時の描き味、色味などを”きちんと分かって”使い始めたのは高3の時でしたが、もう、Sくんは分かるらしいので、、与えてあげなければ…!

ちなみに、デッサンでは、6Hから6Bまで、ハイユニ、カステル、ステッドラーを使い分けるように恩師から学びました。Sくんに使わせてみるのも面白いかも?!

Sくんの素晴らしい”敏感”の世界、羨ましいです……!

つづく。

第240話「何か気持ち悪かった事はなかった?」【2017年3月】

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最近再び学校へ通い始めたSくん。足取りは重く、胸が痛いとうずくまり、瞬きを繰り返し、少し手を洗うようになってきている…。原因は色々です。目立って分かるのはいじめ加害者から暴言や暴力を毎日受けている事。それでも「行く」と言うので背中を見送っています…。

さて。学校から帰ると、帰って来たよの笑顔から、すぐに疲れ果てた人形の顔に、それから吸い込まれるようにゲームへ。しばらくは放置しておきます。少し発散できたかな…というタイミングでおやつに誘って、「学校どうだった?」と聞きます。すると良くも悪くも目立った出来事が聞けます。「いついつに誰々に殴られた」とか、「給食のメニューはこんなんでどれが一番美味しかった」とか。勉強の報告はほとんどありません(笑)。

それから更に、最近は、「何か気持ち悪かった事はなかった?」と聞く事にしています。すると、「殴られた時の理由が分からなくて、気持ち悪かった」とか、「ノートの端がやぶれて、どうしたらいいか分からなくて気持ち悪かった」とか、「服が気持ち悪くて、脱いだらあかんし、我慢したけど気持ち悪かった」とか、細かな話が聞けるようになってきました。

理由が分からないから気持ち悪い、どうしたらいいか分からないから気持ち悪い、など、困りがたくさんあるんだなと分かります。地道な作業ですが、その困りを一つずつ見つけては紐解く作業を続ければ、昨日より明日は困らないかもしれない、そう思うのです。

「Sくんは自分が困っている事に気付けない」これが発達障害の人が抱える最大の困りではないでしょうか。困りは、見つけて自分で解決するか、見つけて周りに助けを求めなければなりません。そうしなければずっとわけが分からないまま、我慢し続けて、身体や精神がおかしくなる程のストレスを抱える事になる。私はそれが分かります、自分がそうだったから…。

「自分の困りに気付かせる」、地道な作業は続きます……。

つづく。

第239話「あの子はアーティストだから。」【2017年3月】

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その昔、私の部屋は床が見えないくらい散らかっていました。なんでも下に置いていて、積み重ねて、とにかく物が多い。綺麗に整頓しているのは、大量の漫画棚だけ。絵のコンクールで稼いだ図書券で部屋を漫画だらけにしていたのです。遊びに来る友達は紙袋持参。散らかった部屋で漫画を読んで、あとは借りて帰るのです。

久しぶりに来る親族は、部屋が汚すぎてよろめきますが、母が必ず言うセリフがありました。

母:「◯◯はアーティストだから。いいの。そのままで。」

一応、作家になる為の大学へ進学し、細々と内職のように仕事をもらっています。偉そうにアーティスト!なんて言える人物にはなれませんでしたが、母は、私の片付けられない様子を、アーティストだから!と折り合いをつけていたのです。

今は主婦になって昔よりはマシな部屋に暮らして、偉そうに、かいじゅう兄弟に「お片付けしなさい!」と言っています。

頭の中に、母の「アーティストだから!」が響きます。ふと思い出した昔話でした……。

つづく。