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かいじゅう兄弟

二分脊椎症のママと発達障害のかいじゅう兄弟が繰り広げるドキュメンタリー

第13話「Sくんとラッキーチョコレート。熊本の療育施設にて1回目のウィスクサード。」【2013年11月】

私は秋の空が好きです。熊本の冬はしっかり寒くなり、春は4月の始めに少しあって終わり、長い夏が10月頃まで続きます。秋は11月の少しだけ、またすぐにしっかり寒い冬が訪れます。

満6歳から受けられるウィスクサード(現在のウィスクフォーは満5歳6ヶ月から受けられる)という発達検査を引っ越し前に受ける事になったSくん。療育施設で受けるか、熊本市のセンターで受けるか迷いましたが、慣れた場所の方がより正しい結果が出るという事と、療育施設では結果の他に詳しい説明とレジュメもあるという事で、療育施設で受ける事に決めました。
(後に、民間の療育施設で受けたウィスクサードの結果を採用されない場合が多発してしまいました。でも、Sくんにとって、慣れ親しんだ先生と検査を受けられた事は良かったと思っています。)

いつもの療育施設で、正面に座る先生とSくんの後ろ姿。私はそばで黙って様子を見守っていました。通常は、どんな流れ、どんな出題、何時まで何をする、休憩があるかないか、などは教えてもらえませんが、先生はウィスクサードの流れを長い長いトイレットペーパーのようなタイムラインにして、出題ごとに絵カードをはり、3課題ごとにチョコレートがはってありました。

療育の先生:「ここまで頑張ったら、ラッキーチョコレートとお茶。休憩はこの時にするからね。でも、トイレやお茶はこの時以外でも、行きたい時、飲みたい時に言ってくださいね。さぁ!がんばろー!」

Sくんは一生懸命に取り組んで、特に視覚的な課題や、言葉の意味を話して説明する課題に力を発揮していました。時間制限があり、図形に印をするようなスピード感を求められる課題は苦手で、最初からなかなか取り組もうとしませんでしたが、先生が、2、3問、一緒にやり方を見せてくれると、少しは取り組むことができました。

チョコレートやら休憩やら、合わせて2時間。Sくんは頑張りました。

先生:「この子はみんなが時速50キロで走る道を、時速200キロ出せる能力を備えているスーパーカーなのよ。ただ、今はコントロールが効かないだけ。うまくコントロールする為にコンサータという薬が役に立つかもしれない。」

後に「コンサータ」という薬を飲むようになるだろうという話と、それで椅子に座って勉強に取り組めるようになれば普通学級でも過ごしていけるかもしれないという話、しかし、「コンサータ」には重い副作用がある話を聞きました。

引っ越しをする我が家の為に、療育の先生が、学校宛に解説とお手紙を書いてくださいました。お手紙には、加配が必要な事、困りが見えにくい事、ワーキングメモリの低さ、処理速度の遅さから、後には、計算機やデジタルツールを使用する必要があるという事が書かれていました。

後に、Sくんの小学校生活では、「障害は本人の中にあるのではない、本人の外の世界にあるのだ」と思う事が度々起こりました。今、振り返れば、療育の先生は、「その後の未来の世界で、Sくんがどんな困りを抱えるか」が見えていたのだと思います。

入学前から準備していた支援のモデルは、その後もずっと、Sくんの歩む道のベースになり続けましたが、教室にデジタルツールを持ち込んだり、数値的には高いのに加配や育成学級を利用することには、大変に高い壁があったのです……。

つづく。