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かいじゅう兄弟

二分脊椎症のママと発達障害のかいじゅう兄弟が繰り広げるドキュメンタリー

第114話「Sくんは規格外」【2016年10月】

夏、リオの中継を見ていたSくんが言いました。

Sくん:「世の中には、なぜ、オリンピックとパラリンピックしかないの?どちらにも入れない人はどうしたらいいの?」

前期が終わりました。Sくんは普通学級に所属している為、LD等通級教室や個別学習、育成学級への逆交流については、成績表に算出されないとの説明が前回の面談でありました。学校側としては、Sくんに「育成学級へ移籍して欲しい」というようなニュアンスの話もありました。育成学級へ移籍するという事は、「LD等通級教室や個別学習が取れないという事になり、Sくんにとってはマイナスではないか」という話に発展しました。
(Sくんの発達指数では普通学級が妥当との判断が出ている。また京都市が基準にしている発達指数のラインを大幅に超えている為、本来なら育成学級へ移籍という話は出ないはず。)

成績表の算数と国語、体育の一部が斜線で無くなっていました。記載があるところはほとんど1です。Sくんが寂しそうな顔をして成績表を見ていました。何を感じたでしょうか。……Sくんが、LD等通級教室や個別学習、育成学級への逆交流で頑張った”頑張り”はどこにも記録されません。そして普通学級にいた所はほとんど「もう少し」の意味の1なのです。

学校側からは「普通学級に所属していて、京都市から普通学級の成績表のフォーマットしか発行されないから、仕方ないし、どうしようもありません。」と説明されました。

『おかしいな…』と思う「私が”おかしい”」のか。私達の考えが今のシステムにはまっていないのは確かです。

私は成績表を気にしない親なのでこれを見てSくんに対して何か話したりはしませんが、Sくん本人は納得しないでしょう。私も納得はしていません。

私が芸術系の大学生だった時、舞台の授業が必修になっていました。参加してみたらやっぱり出来ない。障害があってもできないなりにやった姿を評価するという先生もいれば、何もしなくていいから評価は60で単位は出すと言った先生もいました。私は成績表にこだわりのある学生だったので、ほとんどの科目を好成績におさめている中で、舞台の必修科目だけが60である事に納得がいきませんでした。「何らかの形で私の”頑張り”を評価してくれないか、別課題でレポートや研究をして提出するとか…」提案してみましたが、やりとりしているうちに半期が過ぎ、終了してしまいました。

私は映像も舞台も勉強したくてこの大学へ進学しました。だから、自分の人生に、障害が邪魔になったような気持ちになって、自分自身に対して腹が立ちました。

私はなるべく大学の二回生までに必修単位を取ってしまう予定で後半は卒制や発表活動に力を入れる計画でいました。しかし、実際は大学生活の後半に病状が悪化して、いくつかの授業に出席できない日々が訪れました。大学側に提案して、ビデオを撮影したものを自宅で見て学習し、テストだけは受けに行く対応をしてもらっていましたが、後に、”だったら通信学部に転科したらいいじゃないか”という話が持ち上がった事もありました。

その時は学科の先生方が、「その対応はおかしいだろ。これだけの成績を残している学生に対して、この対応はない。通信に転科させる事で損をするのは大学の方だ。」と言ってくださって、私は無事に大学を卒業する事ができました。

さて。Sくんの成績表について、私と一緒になって「その対応はおかしいだろ!」と言ってくださる方が、学校の中にはいません。もしかしたら、京都市の中にもそうたくさんはいないのかもしれません。決められたシステム、決められたフォーマットでしか対応しないのは、「雑だな」と私は感じています。Sくんの障害を支援する気があるのか、ないのか。「”頑張り”に対しての評価を出せない特別支援」って何なのか。『おかしいな…』と思う「私が”おかしい”」のか。世の中は所詮、学歴社会で、規格外である時点で評価は無しになるのか。

障害者差別解消法が4月1日から始まりましたが、時代はまだまだ走り出していません。障害児に柔軟に対応できていないのです。義務教育、システム、フォーマット、そんなガチガチの型の中で、はみ出たSくんを捉えられていない。「規格外だから記載なしでいい」なんて、私は雑過ぎて納得がいかないのです。

Sくんは、どうしたら評価をされて、どうしたら頑張りを認めてもらえるんでしょうか。世の中にはオリンピックとパラリンピックしかありません。学校には普通学級と育成学級しかありません。そのどちらの型にもはまらない人達はどうしたらいいでしょうか。Sくんが活躍できるステージはどこにあるのでしょうか。

面倒臭い事を言う保護者だなと思われるかもしれません。でも、これからも粘り強く、私は、Sくんの成績表に”頑張り”が記録されるように、活動を続けていきたいと思います……。

つづく。