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かいじゅう兄弟

二分脊椎症のママと発達障害のかいじゅう兄弟が繰り広げるドキュメンタリー

第127話「こだわりの食卓と、指揮者の私」【2016年10月】

自閉症スペクトラム代表Sくん、ADHD代表Aくん、アスペルガー代表パパ、そして、私にも発達障害がある。…そんなメンバーが揃う我が家の食卓、外食、外出は、”課題を発見する場”になってしまっています。

まず、我が家のメンバーは好きな食べ物がバラバラ。ただの好き嫌いではなく、 激しく好きで、激しく嫌い。一番好き嫌いが激しいのはパパです。

しかも三人は気分屋。かいじゅう兄弟は、さっき「食べる!」と宣言した物を「食べない!」と投げたり、ゴネたりする事が日常茶飯事。食べ物系のサプライズは禁止。初めて作るレシピは最悪私だけで何回も食べる覚悟でいます。

だから、食卓はそれぞれに好きなものを少しずつ出します。全員食べられるのはカレーかおでん。問題なく行ける外食は回転寿司かバイキング。食べ物ではありませんが、あと、問題なく行ける行き先は映画館。どれも場所が違ってもフォーマットが分かりやすく、失敗が最小限で済みます。

しかし…フォーマットがあっても問題が完全な0にならないのは、パパにとって食事が”食べる作業”で、子供達にとっては”お喋りの場”であるから。一緒に食べると不協和音、パパは怒り続け、かいじゅう兄弟は泣き続け、とても不具合のある食卓です。

正直なところ……、時間をずらすとトラブルが0になるのですが、毎日一緒に暮らしていて時間をわざわざずらすのもなんか違和感があるので……。いつまでも音のあわないオーケストラを、指揮者の私が試行錯誤しながら率いています。

生活の中でお風呂も課題あり。フォーマットは同じでも、平日のヘルパーさんはお風呂を”遊びの場、コミュニケーションの一つ”と捉え、パパは”体を洗う場所”としてだけ捉えているので、パパがいる土日はお風呂場から怒鳴り声が響いていました。

そんな音の中で胃がキシキシ痛みながら、『私はどうしたらいいんだろう…』そう思い考え続けていました。すると、良くも悪くも、いつの間にか、かいじゅう兄弟は自分達でお風呂に入れるようになったのです。

メンバーみんながムカムカイライラしないようなバランス、かいじゅう兄弟の不器用さによるトラブルを回避して。指揮者は指揮棒を振りながら気配りしすぎて、毎日自分が何を食べていたか分からなくなるのでした。

もちろん私にも好きな食べ物がありました。ここ10年ほど、自宅でそれを食べていません。家族で共有できないと分かっているので、外で一人で食べるか、友達とランチへ行くか、そんな形で満足しています。

食卓、外食、外出、課題を発見すれば、解決策を見つければいい。でも、自分は変われても、人を変えるのは難しいし、私が気にすることはない、私が悪いのではないのだから。……と、自分自身に思い聞かせてみても、私は指揮者の感覚で、この音の合わない家族をどう率いて行くのか、悩み、考えて続けています。

とても難解なパズルのように。それぞれの感情の起伏を察しながら、不器用さを調整して、少しでも普通らしい食卓の雰囲気を、静かでスムーズな外食や、人に迷惑をかけない外出の様子を作り出せないものか。

三人からよく、「普通って何?」と聞かれますが、そこにまさにヒントがあって。普通の範囲が分からないから、はみ出る事があって、だいたいでいいから寄せて行く努力や、寄せて行く方向性を、繰り返し、刷り込めたらな…と思っています。

指揮者の努力はまだまだ続きます……。

つづく。