かいじゅう兄弟

二分脊椎症のママと発達障害のかいじゅう兄弟が繰り広げるドキュメンタリー

第648話「三重奏」【2018年7月】

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* * *


父:「どうして、あんたは、Pくん(パパ)がSを虐待しているのを、すぐに止めないんや!防がないんや!障害があるから仕方がないんやって説得しーや!」


繰り返し、父からよく言われるけれど。


それができたら、もうやっている。


パパには昔で言うところのアスペルガー人格障害かな?という特徴がある。私の話に耳は貸すけれど、必ず、間違えた、"ひねた受け取り方"をして、私をおちょくってしまう。


『日本語を知らない、違う文化圏から来た何者かと話しているような、テニスコートでいきなりバスケットボールを投げられたような、食い違いのコミュニケーションが生まれる。丁寧に何度もテニスコートでテニスをするようにラケットとテニスのボールでサーブしても、違うボールが帰ってくる。違うボールはスルーして、また丁寧に、テニスボールを打つ。徐々に腹が立って来て、テニスのラケットでバスケットボールを打ち返そうとしたら、ラケットが折れたような衝撃を受ける事もある。』


二重カギカッコの部分を父は理解できないから、まるで、私が虐待を見て見ぬふりしているように感じるようで。


私:「それじゃ……お父さんは昔、なんで、私らがお母さんに虐待されてたのを、止めて、防いでくれなかったん?」

父:「い……。」(父は、"え?"の代わりに、"い"と言う)

私:「答えてよ、お父さん。」

父:「いやー……そんなに酷かったか?覚えてへんわー。」


逃げていく父。追いかけない私。


コミュニケーションや認知に問題がある人に、何かを伝えるのは……一筋縄では行かない。パパもSくんも弟Aくんも。それぞれ、独特に、受け取り間違いをして、泣いたり、怒ったり。予想と違う思考を展開して、かなり間違えた返事を返してくる。だから、かいじゅう兄弟だけでなくて、パパも、"そうなんだから"、ほんとは、"障害があるから仕方がない"のだと私は思っている。たまに腹も立つし、このまま死んだ方が絶対ラクで、家出もしたくなるけれど、それは間違い。正しくない。


三人(パパ、Sくん、弟Aくん)は互いに納得していないとは思うけれど。この家庭内のトラブルは、仕方がない条件から始まっている。私は努力をやめないけれど、一筋縄では行かないから、時間はかかる。もしかしたら、私が生きている期間では解決に至らないかもしれない。


そして……、「また喧嘩してるんか!はよ、止めー!障害があるから仕方がないやろう。」と繰り返し言う父もまた、認知症の祖母の介護に相当苦労している……。


私との電話中に、認知症の祖母が奇怪な行動をとって、温厚だったはずの父が鬼のように怒鳴り出す。聞くと、私の中の子供の頃の私が震え出して、動悸や吐き気がするから電話を切る。しかし繰り返しかかって来て、父は私に、「この様子を聞いていろ!」と言う。……少しおかしくなっているのかもしれない。


認知症の祖母はよく父の大事な書類を引き出しから出して全部破き、カバンや歯ブラシを庭に捨てたり、土に埋めたり、炊飯器やお風呂の水をいじる。セリフを聞いていると、昔、大家族で暮らしていた頃のように大量のお米を炊こうとしているだと分かる。あと、お風呂の水が気になるようだ。もしかしたら、お嫁に来た頃に家事で義母に嫌がらせされた事を思い出しているかもしれない。あと、記憶はあちこちして、たまに、「あんたの嫁さんは何も家事せんと、何してるんや!」と父に言う。すると父は烈火の如く怒り出し、「Yはずっと前に死んだわ!知らんのか!バカヤロウ!いい加減にせい!」と怒鳴る。


父が怒鳴る気持ちは分かる。


でも、祖母は認知症で、たぶん、もう何も分からなくなっている。記憶はあちこちし、悪気なく、父の逆鱗に触れる。で、怒られた、怒鳴られた嫌な気持ちだけが残るから、父に世話されているのに、父の事が嫌いなように見える。


悪循環だから、私は父に、祖母を施設へ入れるように勧めているけれど、父は「お寺さんの立場上、母親を施設に入れるなんてできるわけがない!」と言う。役所の人にも、「私は頑張れます。大丈夫です!」と言ってしまい、認知症の祖母の様子も恥ずかしさからか軽く伝え、だから、介護認定は支援2。は?そんなわけはないやろうと、要介護3の私は思う。


私:「お父さんは、P(パパ)が子供達に怒鳴る様子、理解できひんのやんな?」

父:「そうや、"障害があるから"やのに、かわいそうや。」

私:「じゃあ、おばあちゃんはどうなん?お父さんの苦労や気持ちも分かるけど、おばあちゃんは"認知症で、お父さんに嫌がらせしてやろうというつもりはなく、そうなってしまってる"んだよ。かわいそうじゃないん?」

父:「……!」

私:「お父さんは、もしかしたら、Pの気持ち分かるんとちゃうの?」

父:「……!わしと……Pくんは違う!あんなにわしは酷くない!一緒にせんとってくれ!ただ、腹が立ったのをもう我慢はできんのや。頭では認知症と分かっているけれど、気持ちは許せないんや!」

私:「それ、Pも同じこと言ってたよ。お父さんとおばあちゃんは一緒に暮らさない方がいいと思うよ。施設に……」

父:「それはあかん!わし、お寺さんやぞ!」

私:「じゃあ、キレずに、淡々と、粛々と、介護しーや。」

父:「無理や!わし、人間やぞ。」

私:「そうやな。お父さんはお寺さんである前に人間なんだから、誰に後ろ指刺される事なく、福祉の制度を利用したらいい。このままでは、お父さんがおかしくなるよ。」


一通り伝えて。電話を切りました。動悸と吐き気が。幼い頃に母に殴られて眼鏡が割れた映像が蘇ったりして。苦しいなぁと思います。……母も苦しかったと思います。


きっと、何か親のカンに触る事を私がしたんでしょう。覚えていませんが。私の介護疲れもあったでしょう。でも、なぜ毎日怒鳴られ、殴られ、窓から外に出されたのか。あの日々はなんだったかなと思います。障害があるかないか、どこからが性格の悪さからなのか、分かりませんが、やっぱり、弱い者、反撃できない者に対して、怒鳴る、暴言を吐く、暴力を振るう、大人が喧嘩をする様を見せ付けるのは、間違いだと思います。


虐待は間違い。仕方がないなんて、ない。


ちなみに、パパも昔、父親から相当やられたそうです。


ほんとは。みんな、みんな互いの立場、気持ち、分かってるんじゃないかと思います。自分の気持ちに蓋をしているだけ。ほんとは分かっている。経験者なんだから、忘れたり、分からなかったり、する、はずがない。


なるべくお互いが自分の怒りを自分でコントロールして、それが無理なら、一緒にいてこんなに辛いなら、別居がオススメだと私は思っています。あと、みんな介護疲れしているから、羽を伸ばしに行って欲しいと思います。


昔、母から受けたそれと、今パパがかいじゅう兄弟にするそれと、父が祖母にするそれ、介護と虐待の三重奏が重く私にのしかかってくるのでした……。


つづく。